マスカレード【仮面de企画】
「あら、お会いしたことありまして?」

ありがち。我ながら陳腐な台詞だわ


「三田志鶴さんのお友達でしょう? 先程まで一緒にいるのを見ましたよ。とても印象的だった」


「志鶴が? それともわたしが?」


「どちらも」


そつのないお答えね


「三田様? どちらのお嬢様だったかしら?」

わたしの横にいた女性が間延びした口調で言った。


そのドレス、見覚えあるわ


「あら、もうお忘れになったの? 先程、あなたのお兄様がよだれをたらしながら付きまとっていた、赤いドレスの娘(こ)よ」


「何ですって!」


「ああ、ごめんなさい。勘違いね。でも、わたしならお兄様を連れてもう帰るわ。彼女と婚約者が、ほら、あそこに」


女性が振り向く。


「あなた、さっきわたし達に意地悪な事を言っていたわよね。あの娘、ああ見えて執念深いわよ」


「ああ、因みにあの婚約者殿は羽竜圭吾君ですよ」

柚月さんが楽しそうに言った。

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