マスカレード【仮面de企画】
「う……羽竜圭吾様?」

女性は胸元を押さえて後ずさりした。

「あ……兄を捜した方がいいようですわね。ごきげんよう柚月様、いずれまた」


「あら、圭吾さんって顔が利くのね」

足早に去る女性を見送りながら、わたしは言った。

「あんなに怖がらなくてもいいのに」


「あの無愛想な顔に睨まれたくないんだろ。気持ちは分かるけど」

悟が陽気に言った。


「ちょうどよかった。あの女性には、いささか退屈していたのでね」

柚月さんが微笑んだ。


すると取り巻きの女性陣が、『では、あたくしが退屈を紛らせて差し上げてよ』的な言葉を口々に言う。

やれやれ……わたしの出る幕はないわね

まあ、目の保養にはなったかしら


「悟、あんたの勝ちよ。わたしは下りる」

「もう? しょうがないなぁ。見切りつけるの早過ぎるよ」


「待って。何の話?」

柚月さんが、わたしを止めるように腕に手をかけた。


「わたし達、賭けをしたんです。負けた方が募金するって」

わたしはどうでもいいように肩をすくめた。

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