スピリット・オヴ・サマー
「逃げたんだよ、『嫌い』って言われるのが恐くて。」
「…それだけじゃねェ。」
 「少女」の声は小さかった。膝の上に組んだ腕の中で、「少女」はつぶやく。
「憲治さんは『自分が逃げた』と思ってるども、憲治さんの手紙受けたときの千佳子の気持ち、考えだことある?」
 笑える雰囲気ではないと感じて、憲治は小さく答えた。
「迷惑だと思ったんじゃないの?」
「ばーか。」
 「少女」は憲治には目もくれず、小さな声で罵倒した。
「だがら、憲治さんは、なーんも分がってねぇって。」
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