森林浴―或る弟の手記―
修介もその隣で、眉をぐっと寄せました。
そんな修介の顔を見るのは初めてでした。
恐らく、佐保里姉さんは死んでしまったかもしれないと思っていた愛娘と再会出来た喜びで、それ以外のことが考えられなくなっていたのでしょう。
目の前でそんなことを告げたら、二人がどうなってしまうかまでは、考える余裕がなかったのです。
佐保里姉さんは愛しそうに早苗の頬を撫で続けました。
三十年以上振りなのです。
愛娘の存在を感じていたかったのでしょう。
ですが、佐保里姉さんの嬉しそうな表情とは反対に、早苗の表情はどんどん曇っていきました。
瞳は忙しなく動き、細い顎はがくがくと震えています。
そして、その顔は真っ白になっていました。
早苗の頭の中には、様々なことが浮かび、混乱しているでしょう。
その気持ちは、早苗本人にしか分からないものです。
実の弟を愛し、関係を持ち、挙げ句妊娠までしてしまってのです。
早苗はその事実をどう受け止めたのでしょう。