失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
わたしも羽賀さんも、お互いに彼氏彼女を欲していない。
それがとても良い。
男女間に友情はないとか言うけれど、こういう条件下なら話は別だと思う。
友情、ともまた違う、そう、同士みたいな関係。
初めて食事に行ったとき、羽賀さんは失恋中だと言った。
あんなステキな人が失恋だなんて信じられないけど…。彼のあの時のおどけた笑顔の奥に感じた苦しさはきっと気のせいじゃない。
彼もきっと苦しんでる。わたしと同じで。
そして「元気でたのかな」と言った彼も同じくわたしの苦しみを感じ取ってるんだ。
って、勝手な思い込みなんだけどね。
「さてと、練習練習!」
大量にある楽譜をカバンから出してピアノに並べ始めた。
ピアノと歌だけがわたしの心の置き所かもしれない。
ずっと幼いころからやっていたから、今ではもうわたしの体の一部のような、生活の中では欠かせない部分と化している。
本当なら、大好きな歌で生活できればいうコトなしなんだけどなぁ。
数ある楽譜のなかから今日歌う候補曲を数曲選び出して練習に入る。
午前中に歌のレッスンを受けていたから発声練習はパスして伴奏を軽く弾きながらメロディも流すように歌っていく。