失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
先週は80年代の洋楽をメインにやったから、今週は最近の流行の曲にでもしようか。
オリジナルは持っていない。たまに作曲科の子たちにせがまれて歌う事はあっても自分で作ることはしないから、エリザで歌うのはもっぱらカバー。
でもそれが一番受けが良い。
結局、お客さまは音楽を聴きにエリザにくるわけじゃなくて、酒の肴に聞いているだけなんだ。でもそれがまた難しいんだけれど。
『主役にはなっちゃいけない。うちのアーティストはあくまで酒の肴だ』
バー・エリザで採用を知らされた次にオーナーの酒井さんが言った言葉。
音楽家にとって、ステージっていうのは主役になるための場なのに、主役になるなと言われた。
こういうカフェやバー、レストランなどは演奏の場ではあってもある種特別なものなんだ、とこの時初めて気付いた。
それまでのわたしはずっと“わたしの歌を聴いて!”と全身からそんなオーラを出していたに違いない。
それだけに酒井さんのあの言葉はとても響いたっけ。
「わたしもなかなか成長してるじゃーん、ふふふーん」
その後、順調に曲目も曲順も決まり、あとは本番を待つだけとなった。
羽賀さんからの返信は無いけれど、お仕事もあるだろうし、毎週やってることだし気にしない気にしない。