蜜色オフィス


「部屋、出る時だけ警備員に見つからないように気をつけて」
「うん」
「おやすみ」
「……おやすみなさい」


なんだか照れくさくなるような挨拶を交わした後、宮坂がパタンって静かな音を立ててドアを閉める。

それをじっと見つめてから、座った状態のまま横向きにベッドに倒れこんだ。

90度回った視界。
閉ざされたドア。

しばらくぼーっとしてから、さっき宮坂が触れた頬に自分で触ってみる。
少しだけ冷たかった宮坂の手の感触を思い出して……、自然と涙がこぼれた。


近くにいるだけで、嬉しい。
頬に触れられるだけで、すべてが満たされて苦しくなる。

見つめられるだけで時間が止まって、
微笑まれると幸せでいっぱいになった。

宮坂がくれるすべての事が、私の幸せだった。


そんな風に思える事、今までなかったのに―――……。


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