アイの在り方

………―それは、否めない。
キレたら手がつけられないぐらいの奴だったし。

フェンス越しに見える景色を少し眺めて大きく深呼吸した。
そして、また生きるんだと絶望を考えながら揃えて置いた靴を履いた。

「帰ります…どうもお騒がせしました…」

「いえいえ、何のお構いもしませんで」


………ほんとにな。
ハァとため息をつきながら屋上を後にしようとした時に呼ばれた。教えた名前じゃなく"ねぇ!"と。

「………な…うわっ!」

小さな物体が目の前をすばやくかすめカランと地面に落ちた。
それは、可愛い包み紙の飴玉。

「あげる、それ食べると元気と勇気5億倍」

「ご…億倍って…」

でも、何だか気持ちが軽くなった。ピンク色の綺麗な飴玉を口にほうばりながら家に戻った。


< 9 / 19 >

この作品をシェア

pagetop