アイの在り方

差し出されたバッグを受け取ろうと腕を伸ばすと何を思ったのか彼が腕を引いた。

「……あの」

「ウチに来る?」

「は?」

え?今、何て言ったの?ウチに来るって言ったような気がしたけど聞き間違えたかな?
呆気に取られて返事もせずにポカーンと口を開けていた。

「いや…まぁ、うん。気が向いたら来ればいいよ」

ポケットから一枚のメモを取り出してバッグと一緒に渡した。
すごく照れ臭そうに見えたけど飄々としている印象が強かったから、それは気のせいだって思えた。そして、そのまま帰ってしまった。バッグを持ったまま立ち尽くしてハッと我に返り押し入れに突っ込むと溜まっていた洗い物を無心に洗った。

何だろう…―何て言えばいいんだろう…胸の中のモヤモヤが和らいだ気がする。
非常識って言うかあり得ない台詞なのに、怒りとかなくて…―

わかんないけど、うん。
まだ、捨てたもんじゃないのかなって思った。

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