アイの在り方
目の前で死のうとする人間を止めるんではなく死ぬ場所アドバイス?止めるでもなく?
「ね?しかも俺のお気に入りの場所だからよそでして」
上げた右足が宙に浮いたまま固まってしまった。死のうとしてる本人が言うのも何だけど冷たくない?普通って止めるよね?しかもお気に入りの場所だから他で死ねなんて…―
眉間が痛くなるぐらいに睨むあたしなんか気にも止めずにその人は備え付けの色褪せたベンチに腰を下ろして煙草を吸い始めてしまった。
「………なんで」
口から白濁の煙をフゥと空に吐くとあたしに視線を向けた。
足まで組んでリラックスしてるし何かムカつくんですけど!
「なんで目の前で人が死のうとしてるのに止めてくれないんですか!?」
………フゥと肩の力を抜いて彼は言いました。
「止める義理なんて俺にはないよね?」
うっ…そりゃ確かにそうかも知れないけど!
「止めて欲しいの?」
「……そう…いうわけでは…」
「死にたいなら死ねばいいんじゃない?」
口元を緩ませながら優しく毒を吐き捨てると彼は煙草をグシャっと灰皿に押し付けて立ち上がりバイバイと帰ってしまった。