薄紅空
「突然の雨に弱り果てていたら、希有な乙女と出会ったものよ。」
突然の声にはっと瞳を開ける。
警戒の色を強くにじませた瞳で、見ると、そこには馬上の人がいた。
その馬は、雪のように白い、見事な駿馬。
何より驚いたのは、その駿馬に劣らない神々しさで露を見つめる、美しい男。
帝の子息であり、皇太子でもある、月都の宮。
紛れもないその人が、佇んでいた。
「し、失礼いたしました。」
露は慌ててその場に平伏しようとするが、それを月都の宮が止める。
「よい。そなたのような乙女に、突然声を掛けた私は無礼であったな。どうか許しておくれ。」
そう言って、月都の宮は、はらりと馬から下りる。