薄紅空
「そなた、名は何という。」
「露と申します。月都の宮様。」
「露、か・・・。そこの村の生まれなのか。」
雨でひっそりと静まりかえった村に、月都の宮は目を向ける。
「生まれは分かりません。私は、孤児ですから。ここで、拾われ、育てられたのです。」
露は、己の身の上を悲しく思いながらも、話す。
「そうか・・・。露、そなたは雨が嫌いではないのか。」
「私は、陽を拝めて生きております。」
即座に言うと、月都の宮は笑う。
「それが、この国の答えであるな。しかし、そなたのまことを聞いておるのだ。露。そなたは、雨が嫌いではなかろう。でなければ、このような雨のもと、美しい声を奏でるわけがない。」
月都の宮の言葉に、露は赤面した。