【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「物は相談なんですが、如月優花さん」
「……」
「この女の肉体を殺したくなかったら、私と一緒に来てもらえませんか?」
無言で睨みつけていたら、玲子の殻を被った悪魔は、ケタケタと獣じみた甲高い笑い声を上げた。
「別にこの女が死んでも、私は困りません。恋人でも、家族でも、その辺の通行人でも、それこそ人質になる人間は吐いて捨てるほどいますからね」
そして、悪魔は笑いながら問う。
「あなたは、あなたの心は、どこまで耐えられますか?」と。
『優花――、聞こえるか、優花』
息を飲む沈黙を破ったのは音声ではなく、優花だけに向けられた晃一郎の心の声、テレパシーだった。
『うん……、聞こえるよ晃ちゃん』
『村瀬以外の奴はみんな雑魚だ。俺が先に突っ込んで、アイツらを片付ける。その隙に、村瀬を頼めるか?』
玲子と手下の五人。攻撃を仕掛けるなら、同時でないと意味がない。