【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

『分かった。合図して。それと同時に、私は玲子ちゃんの背後に飛ぶから』


『了解』


晃一郎の横顔に、会心の笑みが宿る。


二人の沈黙にさすがに業を煮やしたのか、玲子は苛立たしげに、声を上げた。


「さて、そろそろ、答えを聞かせてはくれませんか?」


答える代わりに晃一郎は、


スッと自分の右耳に手を伸ばすと、付けられた銀のイヤーカーフ、


実は超能力の発動を抑制する『ESP制御チップ』を、パチンと外して指で弾き飛ばした。


キーンと、硬質な金属音が沈黙を裂き、


「な……んだ?」


ただならぬ前兆を感じ取ったのか、玲子の異形の瞳に困惑の光が走った、


その刹那。


一陣の荒々しい熱風が、敵に向かって吹きすさんだ。

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