【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
「ばか……な。データと違……」
三年前、力が覚醒する前の優花だったら、きっと逃げ出していた。
自分のために誰かが傷つくらいなら、自分が犠牲になればいい。
そんな自己憐憫に酔って、立ち向かうことなどしなかった。
――だけど、あの時の私とは違う。
失ったものと、得たもの。
その両方が、今の私を強くしてくれている――。
「データが古かったみたいだね。人間は、日々、成長ってものをするんだよ」
「く……そっ、こんな……ところで――」
その呟きを最後に、ガクンと玲子の体が崩れ落ちるのを、必死に抱き留め……。
「あ? あわわわっ!」
ようとした優花は、ものの見事に玲子諸共、後ろにすっころんでしまった。