【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~

――たぶん、芝植えとは言え、後頭部を地面にしたたか打ち付けたんだと思う。


ゴチンと言う小気味よい音と共に、目から火花が散った気がする。


玲子ちゃんの頭は何とか、自分の体でホールドできたと思うけど。


カッコ良く決めたつもりなのに。


ああ、私って、つくづく間が抜けてる。――


と悲しくなりながら、世界が暗転。


どのくらい気を失っていたのか、


「優花――」


と、名を呼ばれた気がして、ふっと目を開けた時、視界の先にある空はもう、茜色に染まっていた。


秋の夕暮れの空気は、ピンと張りつめていてどこか冷たい。


物寂しく薄く広がる、秋の鰯雲。


黒く沈んだ森の木立の向こう側へ、


昼の名残をその空に残し、大地に沈みゆく太陽の残照が、微かな光を投げかけてくる。


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