ワイルドで行こう
 いつものちょっと一方的で強引な彼の気持ちが、一直線に琴子に向かってくるその瞬間。
「はあっ。あっあっ、あ、」
 もう声を堪えることは出来ない。迷い無く琴子を貫いた英児が激しく入り込んで突き上げてくる。
 琴子の両足を開いて、果敢にそこに攻め込んでくる。
 うっうっう、んっん、んっんっん。動く彼の胸元で、琴子は黒髪を振り乱して首を振る。この前と違った。愛し合うまでひとつになるまで、英児はじっくりと愛撫を施して愛してくれた。なのに今日は、今日は。
「ごめんな。すげえ我慢していたんだ」
 ううん。いいの、いいの。声にならなくても、琴子は彼を見つめてそれを伝えた。それを英児もわかってくれたかのように微笑み返してくれる。
「……お前も……おなじ、みたいだな」
 言葉を返す気もなくなるほど。琴子の身体がもう隠しようもない返事を彼に伝えている。
 そう同じよ。英児と同じ。私もこうなるの、待っていた。
 残業を終えた琴子を迎えに来た英児は、帰りは遠回り。人のいない河原沿いの道に車を止めて、すぐに琴子の肌を探る。熱くて甘いキスを交わしながら、そして肌を愛されながら、でも……二人でいろいろ話してから帰った。それでもほんの短い時間だから、名残惜しい切なさがいつまでも二人を離さなかった。挙げ句に、本当に『ホテルに行こうか』と二人揃ってその気になりかけた日もあった。
 でもそこを堪えたのは英児自身。『俺の部屋でゆっくり抱きたいから』。時間を気にしないでじっくり。琴子も仕事で疲れた身体で急いで愛し合って帰るよりかはそれがいいと、琴子自身も自分に『言い聞かせた』。
 つまりそれは琴子も、『非常に我慢していた』。
「俺もだけど。琴子もすごいな」
 初めて抱き合った夜は、英児も琴子を大事に扱ってじっくりと肌を愛してくれた。だから琴子も、じんわりゆっくりと、そしてたくさん感じて濡れた。
 でも今日は――。
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