ワイルドで行こう
「うっせいな。アイツが生意気なんだよ。いつまで経っても!」
「師弟だから。師を超えたい男気ってやつなんじゃないのかなあ」
『師弟』!? 琴子は驚いて矢野さんを見てしまう。そんな琴子の視線に気がついた矢野さんも、キャップのつばをぐっと降ろして目線を隠してしまった。
「矢野さんは、元々、タキさんを雇っていた腕利きの車屋だったんですよ。タキさんの整備士としての育ての親。タキさんが店を持つと決めた時に、自分の店を閉めて『雇ってくれ』と言い出した変わり者ですよ」
武智さんが教えてくれたことに、琴子はますます驚きただただ矢野さんを確かめるように見てしまう。
「うるさいな。俺はもう経営に疲れていたんだよ」
「でしょうねえー。整備士としては凄腕でも、そんだけ無愛想で頑固親父じゃあねえ。その点、タキさんの方が人脈もコミュニケーション力もあったもんね」
結構、ずばずば言う武智さん。だが矢野さんは黙って何も言わない。武智さんがさらに続ける。
「という経緯で。いま、矢野さんはうちの経営アドバイザーみたいなもんで、社長の補佐役、専務をしてもらっています」
――矢野専務!?
「でもね。矢野じい。そればっかりはほんと、覚悟した方が良いよ。聞いてから動かしてよ、頼むよ」
「お前、黙ってろ。武智」
矢野さんの目線ひとつで、武智さんがびくっとして黙ってしまった。