ワイルドで行こう
彼女らしくない、ビビットな赤い服。でもとても似合っている。彼女の白い肌の色をとても際だたせ、許されるなら今すぐ、その頬に、首筋や胸元に吸い付いて激しく愛してあげたくなる。
「はあ。参ったな。昼間の仕事中だなんて『クソくらえ』って投げ出したい気分だ、今の俺」
だけど彼女が笑う。
「でも。滝田店長は今日も格好良くスカイラインに乗って、車が大好きな人のところへ飛んでいくんでしょう」
「いま乗りたいのは琴子の身体の上だけどな。ぐいぐい運転したい衝動に駆られています、俺」
平然として言うと、流石に琴子が面食らった。
「やだ、もうっ。英児さんったら。本当に、もうっ。いつも急に平気で言い出すんだから」
彼女に背中をばしばし叩かれる。それでも英児は、そんな照れる琴子をからかうのが楽しくてにたにたしてしまうだけ。
「待ってて。若葉マークを外してくるから」
「おう」
スカイラインの運転席に乗り込み、交換したキーを差し込む。バックミラーに若葉マーク片手の彼女が映っている。そんな琴子を眺めながら英児は思う。
――前カレ、なんでいるんだよ。
そう思うが。せっかくいい雰囲気で彼女が笑顔で見送ってくれるので、その一言を英児は胸の奥にしまい込んだ。
「貼り替えたわよ。じゃあ、ゼットに乗って帰ってくるわね」
「だんだん日が短くなってきたからよ。早めにライトを点けるのを忘れるなよ。夕方の薄暗い交差点は要注意だからな。運転、気をつけて帰って来いよ」
初心者の彼女を案じて、ついつい口うるさくなってしまうこの頃。でも彼女はやっぱり優しい笑みでうんうんと可愛らしく頷いて聞いてくれている。
「英児さんも、外回り気をつけて」
「ああ」
シートベルトをしてエンジンをかけ、見送ってくれるドアを閉めようとした時だった。
「彼……。先週から、この事務所の正社員になったの。フリーランスで仕事をするのはやめたみたい」
琴子から急に言いだした……。英児は琴子を見上げる。ちょっとばかり申し訳ない顔をしていた。