ワイルドで行こう
「小鳥は知らないだろうけど、あれで矢野じいと親父さんはそっくりだよ。そこのガラスを割る大喧嘩をしたのは知っているだろ?」
それはもう伝説だか武勇伝みたいに龍星轟で語り継がれているので、幼い時より耳にしてきた小鳥もこっくり頷く。
「つまり。矢野じいは、もう爺ちゃんだから、今はカッとなる代わりにパニクっちゃうの。小鳥が心配で心配で、きっとタキさんと同じ事を考えていたと思うよ。あちらのご両親が許してくれても、それでいいのかと。きちんとあちらとわだかまりが残らないよう、小鳥が学校で孤立しないよう、もう一度ちゃんとケジメつけて来いよ。琴子が行った、親父のお前も行っておけてね」
小鳥は言葉が出てこなくなる。なぜって……。止めてくれなかったことにはひとこと言いたいけど。そんな生まれた時から見守ってきてくれたおじいちゃんが、そこまで小鳥を心配してくれていたから。
「あとで。矢野じいにありがとうっていっておく」
「心配で心配で、父親であるタキさんが帰ってくるのを矢野じいも待っていたから。つい、だったんだよ。俺達も止められなくて、ごめんな。小鳥」
小鳥は首を振る。なにもかも自分は発端。そして、両親だって、龍星轟のみんなだって、こんなに心配してくれていたのに――。
「専務、ガレージ開けておきました」
その声に、小鳥はドキッと固まる。
「今日の整備スケジュールに合わせて、顧客の車の入れ替えをしておきます。本日のスケジュール表、見せてください」
龍星轟のジャケット、そして作業ズボン姿。だけどスッとした落ち着いたたたずまいを醸し出す男性が事務所に入ってきた。