ワイルドで行こう

 チョコレートなんてもうどうでもいいし、ただ、ただ、結婚して妻になったばかりの彼女をそばにゆっくりできればそれだけでいいのに。それがままならない時期。ただそれだけ。
 溜め息をつきながらベッドルームに戻った英児は、独りブランケットにくるまった。
 さすがに夜も深くなってきて、眠気が襲ってきた。遠くから彼女がドライヤーをかけている音が聞こえてきて、安心する。ちゃんと目を覚まして風呂から出たんだなあと。
 安心するとうとうとしてしまった。ああ、今夜も俺は先に眠って、琴子の匂いを抱きしめられるのはまた明日の朝、慌ただしい一時だけか――と思いながら。
 英児さん。琴子の声をかすかに感じて、英児はようやっと眠りそうだった眼を力無く開ける。
 眠っている英児を琴子が覗き込んでいるところ。
「おう、お疲れ」
 英児がくるまっていたブランケットの中へと、彼女が潜り込んできた。

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