ワイルドで行こう

「いや、琴子……。あのな……」
「あ……、英児さん、眠いよね、もう」
 琴子が我に返ったようにして頬を染め、恥じた顔になる。そして抱きついてきた細腕から力が抜けて、英児から離れてしまいそうになる。
「いや、眠くねえよ」
 力を抜いて離れていく琴子を、今度は英児から自分の胸元へと抱きしめる。それだけで、素肌になった彼女の体温が熱く伝わって、そしてそばにあのイチゴのような匂いに包まれる。
「そんな気分ってなんだよ。俺なんかいつだって、そんな気分で、ずうっと我慢していたんだからな」
「いつだってそんな気分って、やだ、英児さんったら、もう」
 いつだってエッチな気分でおまえをどうやって抱いてやろうか考えているんだと、夫のエロスイッチがいつでもどこでも遠慮なく入ることをよく知っている彼女が呆れながら笑った。
 その笑顔がまた英児の胸をかき乱す。ここのところ疲れて帰ってくる顔しかみていなかったから――。
「琴子。俺、我慢しねえぞ。おまえが疲れていたって、夜中だって、いつも通りだ」
 すぐそばにいるのに、そんな彼女の顎を掴んで英児は上を向かせる。すこし乱暴な男の手に、琴子がちょっと驚いた目。それでも英児はかまわず、誘ってきた妻のくちびるへと自分の唇を押しつけた。

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