牛乳と猫スーツ。
「ありがと〜!悠斗、大好きよ!」
ハイテンションで左手を上げながらクルクル回っている真里香。悠斗は放心状態で床に膝をついている。
「何でそんなハイテンションなのよ?」
見慣れたと言えば見慣れた光景だったが、あまりにも真里香がハイテンションだったので、遥は話しかけた。
「フフフ。見なさい!!」
真里香は左手薬指を遥に見せる。
「そ、それは!!?」
遥はそこに光り輝く物を見て驚いた。
そこには銀のリング。そしてその中央に、まるで王座に座るかのごとく、ダイヤモンドが煌(きら)めいていた。
「か、かかかかかか、勝ち組の証!!」
遥は数歩、後退りする。
「まさかこの年でもらえるなんてね〜!私も驚いてるわ。」
指輪を見つめ、うっとりする真里香。
「あ、あんた…よく買えたわね。」
「あはは…。いずれ渡すもんだろ。早くなっただけだ…そう、なら通帳の数字がマイナスになっても気にならねぇさ…。」
虚ろな目で、どこかを見つめながら話す悠斗。
「買わされたのね…。あんたに初めて同情するわ。」
悠斗は壊れた音声がでる人形のように、ただ笑っていた。