牛乳と猫スーツ。
大技を決めようとした直樹だったが、目の前にいるはずの蓮が消えた。そして、いつの間にか背後に回った蓮が、直樹の背中に左手を軽く触れるように当てていた。
「狼波滅砕掌(ろうはめっさいしょう)。」
一気に左腕を押し出す。
「がっ!??」
背中に強い衝撃を受けて直樹は吹き飛んだ。
「一発も当てたこともないのに、教えた技で師を攻撃しようなんて自殺行為だ。完璧に使いこなせている訳でもないし、ましてや自分の技だ、反撃なんて造作(ぞうさ)もない。」
少し緩んだ着物の帯を直しながら蓮が言う。
「だって他に考えつかなくて…。」
ジャージに付いた土を払いながら起き上がる直樹。
「バカ野郎。」
「いてっ!?」
ペチンと直樹にデコピンをする。
「お前は頭で考えすぎるんだ。しかも、これと決めたら一直線に向かってくる。悠斗のように筋力が異常にあるなら話は別だが、お前は悠斗とは違う。目がいいし、順応でしなやか筋肉がある。私と同じタイプだ。つまり必要なのはスピードだ。」
「なら普通に脚力鍛えればいいじゃないですか。」
「確かにスピードを鍛えれば、お前も教えた技も何倍にも強くなる。だが扱えなければ意味がない。」