ちび×ひめ Ⅰ

苦しい中意識が、朦朧とする。



すると妖怪の背後から黒い影が現れてきて、

『待て』

妖怪は黒い影に止められた。

その瞬間、妖怪の握りしめる力が少し弱まり、黒い影の方に振り向く。


助け? と一瞬思ったが、その思いも砕け散る。

『ま、待て。よく考えろ? お前のナが呼ばれたら、厄介だ。まず、ナを呼ばれないよう、舌を抜いてしまおう』

ぼやけた視界だったが、黒い影の姿が段々とはっきりしてきた。


黒い影は、黒く長い髪で若紫色の服を着ており、キツネ目の四角い顔。

人間にそっくりだが、よく見ればかなり違っている。


まず人間には頭に耳がない。だが、やつにはウサギのように長い耳をしており、耳先は少し尖がっている。

次に肌の色だが、これは人間と見分けはつけにくい。

青白い人もいれば褐色の人もいるからだ。

この黒い影――もとい、妖怪は前者――青白い。

それも異常なくらいに。


最後に、尖がった爪だ。

人間にも、バントとかしてる人は爪を伸ばすかもしれないが、明らかにこいつは違う。


見た目はなよってしてるし、長年の勘ってやつも多いけど。


以上の三点で、こいつは人間でない。



それに、とても現実的なことだが、人間は人間同士殺しあってはいけない。

法律とかでも決められているし、

それをすれば犯罪者になるからだ。

むろん暴力もいけない。


だが、こいつは、明らかに悪意や殺意がある。


だからかもしれない。

あたしがこいつが妖怪だと見抜けたのは。




『……舌を?』

そう妖怪はいい、こっちの方に向き直り、大きな口をニヤリと笑い顔を近づける。

弱く握っていた力も強くなる。、

「うぐっ……」

く……苦しい。






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