ちび×ひめ Ⅰ
その次の親戚の家でも
『ほら、あそこに』
『え? どこに?』
『何もいないわよ、とーるちゃん』
和室の床の間においてある、生け花にのそばには、
顔なしみたいなやつがいた。
あたしはそいつを指さし、
『いるよ! よく見て! あそこに。あそこにいるの!』
必死で言っても、分らないと、困った顔する親戚夫妻。
どんどん空気が怪しくなる一方、そいつはこちらに向いた。
『あそこにいるじゃない!!』
『『…………』』
何を言ってるの? という顔しかしなかった。
『居るって!!』
必死の声すらも届かなかった。
ただただ奇異の目で見るだけで。
居るんだよ……。
なくなく崩れ膝をつくあたし。
そして、結果。
皆の答えは必ず同じだった。
『ごめんね、見えないよ』