アニマルマジック

「………」竜二は珍しく黙り混んでいる。めずらしいのか、それとも言い返す言葉がないのか。
「楽しい引退試合にするはずだったのに…台無し!!」
そう言って竜二の目の前に立つ。竜二はなんだと言わんばかりの顔をしている。

パッチンっ
駐車場に響き渡る大きな音。その音の正体は竜二の頬っぺたにビンタをした音。

竜二は痛そうな顔をしながら気まずそうに立っている。
そら、痛いだろ。私の手も痛いのだから。

「…………っ」叩いたものの、どうしたらいいか分からずその場をたちさろうとした。でも、それは彼が遮った。
大きな手で私を引っ張っている。

「待てって……行くなよ…」私は胸が苦しくなる。そんなこと言われたら離れられない。また、離れらへない…
「桃子行くなって……」ヤンキーなんて言えないくらいの小さな声で呟く。

「ごめんな、桃子…お前の試合台無しにした。悪かった」私の手を握ったまま彼は私に頭を下げる。
「竜二…反省してる?」
「あぁ、悪かった…」彼の悲しそうな顔を見たら許してしまう。私の悪いところだ。私は彼の手を両手で握りしめる。

「なんだかんだで私は竜二に弱い…」そう言うと竜二は私の顔を申し訳なさそうに見る。
「何回、迷惑かけられるの、私は…」彼を見ながら微笑むと彼は勢いよく私を引っ張って抱き締めた。
「ちょ、汗かいてるから…!!」離れようとしても離れてくれない竜二。何も言わないけど、多分今回はほんとに反省している。


「ごめん。俺、桃子居らんな無理」そう言いながらさらに強く抱き締める竜二。竜二……以前竜二の泣いているとこを見たことがあった。彼は強くない、ほんとは強がっていて自分の弱いとこを隠しているんだ。わたしが隣にいて守ってあげないと。そう思った
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