人の恋人は蜜の味。ーa traitor ー

「……心配…だね。私、探しに行ってこようか?」


私は、首を傾げながらゆーちゃんを見つめた。


「いや、俺も行くよ。」


そう言い終わらない内に
ゆーちゃんは鞄を肩に掛け
勢いよく立ち上がった。

ドン。

そのはずみに腰が
テーブルの角にあたり
鈍い音をたてた。



「…いこっか。」


ゆーちゃん、

いこっか。



楽しい楽しい
荒れ地まで。



ゆーちゃんは
カラオケの店員に
乱暴に会計を渡すと
慌てる様に外へ出た。


その少し後ろを
くっつく様に追う私。


今のゆーちゃんの後ろ姿。


なんて…なんて無様なんだろ。



近くのコンビニ。


「いない…な。」


駅の周り。


「いない…な。」



「何で電話も二人共繋がらねえんだよ。」


汗を拭いながら
独り言の様に
呟くゆーちゃんに
私はイライラしながら
声をかけた。



「学校…は?」



「ああ。」


はっとした様に
顔を上げたゆーちゃんは
くるりと方向を変え
学校へと走り出した。


普通近いんだから、もっと早く思い付くだろ。


と、心の中で突っ込みながら
このクソ暑い中走らされる事にイライラしていた。



でも、




待ちに待ったこの時が
もうすぐそこにあると思えば
そんな物苦でもなかった。




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