人の恋人は蜜の味。ーa traitor ー

学校に着くと
野球のユニホームに身を包んだ
男子生徒がグランドから
私たちに手を振ってきた。

今のゆーちゃんにはそんな姿
目に入っていない様だ。


私は名前も出て来ない
その男子生徒に
少しだけ笑顔を作り
軽く手を挙げた。


緊迫した空気を悟られ
おせっかい焼かれても
迷惑だから。



いつもに比べ

しん

と静まり返った校舎内には
グランドから
わずかに聞こえる
部活動の掛け声と
私たちの足音だけが
響いていた。



ゆーちゃんの様に
靴下でずかずかと
汚い校舎を歩くのには
少し気が引けた私は
急いで上履きに履き変え
ゆーちゃんの後を追った。


一段飛ばしで
階段を駆け上がる
ゆーちゃん。


ワクワクが止まらない。




3年の教室のある階まで
階段を上りきると
まずゆーちゃんとおったんのクラスがある。


噛み合わせの少し悪くなっているドアを
ゆーちゃんが無造作に開けると静かな校舎に
大きな音が響き渡った。


ーガラガラピシャ!


「ふー」

ゆーちゃんは少し深めに
息を吐いた。


「あっちかな?」

1番端の教室を
指さすゆーちゃん。


「どうだろうね?」

…なんてね。

正解。

おったんと美沙のいる場所。

そう、

正解だよ。






再び異なった二種類の足音が
早いリズムを刻みながら廊下に響き渡る。



先に止まったのは








ゆーちゃんの足音だった。



「……えっ。」


私にか聞こえない程
声にならない小さな小さな
ゆーちゃんの声。



笑いが





抑え切れない。



< 21 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop