わかれあげまん
柚を片腕に抱え込んだまま助手席のドアを開け、トンと勢いよく背中を突く哉汰。
「座って。おとなしくベルト締めな」
抗議満面で見上げた柚だけれど、哉汰は涼しい顔でボンネットの前を運転席側へ移動していく。
ってゆーか、これって軽く拉致られてんじゃん、…
憮然と考えながら柚は頬を膨らませ、仕方なくベルトに手を伸ばしカチリと装着した。
哉汰の車がいつもどおり見慣れた大学への帰路を行く間も、柚はちっとも落ち着かなかった。
下唇を突き出し身を固くしたまま恐いくらい前を見据えている。
哉汰は至ってマイペースな表情で、横目でチラチラそんな柚を観察していたが、とうとうブハッと吹き出した。