わかれあげまん
「…あた、あたしは、自分がしてほしくないことは、人にしたくないの!」
「ふーん。なるほど?」
土曜の昼の空いた国道に車を転がしながら、余裕綽々にクスクス喉を鳴らし続ける哉汰を、柚は得も言われない悔しい気持ちでギュッと睨み続けた。
けれど。
「そうだな。…もしあんたが彼女なら、俺…好きでもねえ女を隣に乗せたりしないだろうな。」
は、
はあ?
どういう意味?さっぱり分かんないんだけど…
結果、説明をせがむような視線で哉汰の横顔を見つめ続けてしまっている柚。
すると哉汰はまたクスリと軽快に笑ってから肩を竦めて。
「相手が嫌がる事はしない主義なんで。」
…はああ?
だって現に今、あたしがイヤだっつったのに…?
もはや困惑を通り越し、混乱気味の眼差しで哉汰を見上げた柚だったが。
元々あまり回転率のよくない頭をフルに回してみても納得の行く答えが出ず、結局柚は短く溜息をついて諦めるように項垂れた。
「藤宮くんて、変人」
俯いて眉を顰めたまま、結局そんな子供っぽい憎まれ口を言うことしか出来ない柚を知ってか知らずか、クツクツと笑い続けている哉汰だった。
が、この後辿り着いた大学のパーキングで、
柚は哉汰の言った言葉の意味を自分自身で納得することになった。