わかれあげまん
「っていうか…身勝手!…オーボー!…利己シュギ!」
銀色のバンが大学の見慣れた広いパーキングにゆっくりと入っていく頃になっても、ほおっつらを膨らませたまま柚はまだ哉汰の事をそう蔑み続けていた。
「はいはい。ですよね、先輩」
聞き飽きた、とでも言いたげにのんびりした声で言いながら、哉汰は車をバックで駐車スペースの一角に滑らせた。
…うう。悔しい。
結局最後まで、彼の強引さに流されてしまった。
エンジンを切り静寂に包まれた車内で柚は唇を噛み締め、最後の力を振り絞るようにキッと隣の哉汰を見上げた。
その時自分をひとしきり見つめ返す哉汰の瞳には、したたかさも強引さもなく、どこか寂しげな光を宿していて柚は思わず息を飲んだ。
「…あんたの言うとおり。俺って身勝手な男なんだ。」
「…え?」
「…。」
その寂しげなままの視線がふとフロントガラスにそらされ、その視線の先で何かに気付いて、目を見張る。