わかれあげまん
え?と、辿るように柚もそっちを見やると。
パーキングの向こうの私道から、手を振りながら掛けてくる、女性の姿。
遠目に見ても彼女がとてつもない美人だと理解できた。
そして程なく。
サラッサラの黒髪を揺らしながら、哉汰めがけて満面の笑みで駆けて来たその人が、学内で有名な外国人留学生の女の子であることに、柚はすぐに気付いた。
「あ、あれ、あの人、…陶芸専攻のルチアちゃん・・・」
「…」
柚が呟き終わるよりも早く、バンに駆け寄った彼女は外から無遠慮に運転席のドアを開け、
「おかえりカナタぁーーっ!」
っと身を屈め運転席の哉汰にハグをした。
「へ…!?」
わけも分からず、柚はただ横からぽかんと二人の熱い抱擁を見つめるしかできなかった。
「ただいま。ルゥ」
セクシーなルチアの襟元に顔を埋めながら穏やかににそう答える哉汰の横顔を見て、柚の思考回路がゆっくりめぐりだし、あ、と小さく息を飲んだ。