わかれあげまん
「カナタぁ。この人、誰?」
そう尋ねる声は鈴の音のように明るい。
柚の懸念とは裏腹に、ルチアが柚と哉汰との間柄を不審に思っている様子が全くない事に、柚は一瞬、ェ?と訝しく眉をひそめた。
「新しいバイト先の、先輩。」
哉汰が答えると、
「センパイ~!?うそぉ、可愛い~ッ」
ルチアがそう雄叫びを上げながら哉汰の首元から離れ、てててと走って助手席側に回ると、これまた無遠慮に小さな柚の身体をギュウっと抱きしめてきた。
「どひっ!?」
「センパイ、超ガキくさい~!」
甘ったるい声で言いながらすべすべほっぺで頬ずりしてくるルチアに、柚は完全フリーズ状態だった。
「ぷ。お前、日本語おかしいから。」
吹きながら可笑しそうにそう答え、哉汰も運転席を降り、バンの屋根越しに抱き合っている柚とルチアを見てクツクツと笑った。
っていうか。
な、なにこれ…
予想外すぎる展開に柚は最早まったくついていけなかった。