わかれあげまん


…柚は駐車場横の私道を駆け上がり、総務棟のピロティの屋根下に入ると、やっと足を止め、ホッと溜息を落とした。



ナ、なんか焦った…

っていうか驚いたなあ…



鼓動を急ぐ胸を抑えて、そして柚はふふ、と小さく笑みを漏らした。



いつも余裕綽々って感じの藤宮くんなのに、なんか彼女の前だと可愛かったなあ。

カノジョじゃないあたしを助手席に乗せても、平気でいられるなんて…




考えを廻らしながら、柚はピロティにあった水色のベンチに腰を下ろし、


そこから切り取ったように見える綺麗な蒼空をぼんやりと見上げて。


そして思った。




きっと、それだけルチアちゃんは藤宮くんを信頼してるって事だよね。

うん。確かに。ちょっとゴーインで横柄で憎たらしいとこもあるけど。

でも出会って数日で分かった。

かっこいいのは見てくれだけじゃなくて、

基本はきっと信頼の置ける、誠実な男の子なんだ…



藤宮くんて。














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