わかれあげまん
* * *
同じ頃。
暮れなずむ西日が差しこむ哉汰の部屋では。
テーブルにさまざまな色のグロスやマニキュアをずらりと並べ、鼻歌を口ずさみながら上機嫌にメイクアップするルチアの姿があった。
「ん~とぉ、今日はどの色がいいかなあ♪」
美しい紅色系グロスのグラデーションの上を、ルチアの細い指が楽しげに躍るのを、向かい側のノートPC越しに哉汰が苦笑混じりにじっと見ていた。
「そんなに念入りに化粧しなくても、ルゥは綺麗なのに。」
ルチアはクルリとした大きな瞳でモニタ向こうの哉汰を軽くにらんだ。
「だめえ。ルゥより綺麗な娘、お店にはたくさん来るのお!負けたくないもん。」
「たかが馴染みの留学生仲間と飲むんだろ?別に勝ち負けとかねえじゃん。」
苦笑してそう言い放った哉汰に、ルチアはさらに顔を顰めた。
「来たことない哉汰になんて、わかんないよー!べ~だ」
「…。」
そのルチアの一言にあからさまに表情を曇らせる哉汰。
「…んだよ。なら今日は俺も一緒に行く?」
低めた声で聞いてきた哉汰に、途端ルチアは目を泳がせた。