わかれあげまん
たしかに今目の前にいるのは、入学以来ずっと恋い焦がれてきた渡良瀬先輩。
長身で容姿端麗だし、明朗快活、溌剌としててクラブではいつも中心的存在。
けれどもう一方にあるのは、
こと女の子に関しては、相当場馴れしてるから気をつけてっていう、黒い噂。
現に「わかれあげまん」なんて超末期的恋愛オンチなレッテルをぶら下げたあたしを、
一度はまんま、利用した人。
その彼が今甘い言葉を耳に囁いて、そして蕩けるように優しく触れてくるのは、
本当の愛だって、信じられる?
“アンタみたいなカラダだけのネンネちゃん騙すのなんて朝飯前よ。不可抗力不可抗力!”
“…自分で触れ回ってたらしいぜ。あの人。…あんたのおかげで合格できたって。”
美也子に、そして哉汰に言われたその言葉たちが不意に脳裏に甦り、柚はハッと覚醒した。
そうだよ、バカ柚!
信じる相手が違うじゃん!