わかれあげまん
* * *
実際のところ、あまり大丈夫ではなかった。
この時柚は、ロッカー下に置いたバッグの中で、自分の携帯がかすかにバイブ音を鳴らしていることに気づいていた。
しかし、裸でぐったりとソファに横たわったままいまだ起き上がる気力すら損なわれてしまっていた。
横でさっさと身支度を終わらせた渡良瀬が、落下したバスタオルを柚の身体にそっと掛け。
「柚。ホラ、そろそろ着替えないと。冬なんだから風邪引いちゃうぜ?…」
「…」
「動けねーの?・・・」
「…」
「…感じすぎちゃった?」
クスリと笑いながらそう囁いてくる渡良瀬を、柚はどうにかこうにか、否定の眼差しできっと見上げた。
「…ごめん。怒ってるんだな。こんなとこで抱いたから。」
不意にまたその精悍な顔を、感傷的にゆがめそう謝る渡良瀬。
「でも俺…マジだから。約束する。柚の事ずっと大切にする。…な?」
「・・・です。」
項垂れたまま、ゆっくりと上体を起こしながら、か細く呟いた柚に、聞き取れなかった渡良瀬は、ん?と尋ねた。
「今日はもう・・・帰りたいです。」