わかれあげまん



「疲れた?・・・打ち上げ出る元気ない?」


もう理由なんて何でもいい。


とにかく一刻も早く、一人になりたかった柚は、こくりと頷いた。


「じゃあ俺、先に送ってく。」


「…一人で帰れます。幹事サボってゴメンナサイって…、サチヨ先輩に謝っておいて下さい。」


「そっか…分かった。じゃあさ。終わったら柚ン家行くから。」


「・・・」


来ないで下さい。


と言いたかったが、そう告げてごねられるのも嫌だったから、柚は無言を貫いた。




ロッカーから着替えを出し、のろのろと袖を通す頃になっても、その姿を逐一傍でじっと眺めている渡良瀬に屈辱感を覚えることもないくらい、柚は気力を奪われたまま。


そして帰り支度の整った柚に寄り添うように身体を寄せ、渡良瀬は言った。


「…早く機嫌直してな?俺の柚ちゃん♪」


柚を取り巻く絶望的な空気など全く意に介さず場違いのウキウキ声で言い、それから最後にまた、彼女の額にキスを落とした。




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