わかれあげまん


「え、えと…」


この人とは、何でいつもこういうタイミングかな…


おかしな巡り会わせを感じる一方、自分がどういう経緯でここに来たのか、それを哉汰に悟られたくなくて、暗がりの中の柚は必死に言い訳を探した。


「あ、あの、だから、何ていうか、…ちょっと…」


なかなかうまい言い訳が見つからずしどろもどろになってると。


「つーかさ。…何泣いてんの?」


低く問われ、柚はビクっと肩を揺らした。


「な、泣いてないよ?」


「は?…泣いてンじゃん。」


「泣いてなんかなっ…ひにゃァっっ!!??!!」


ヘンテコな声が出たのは、いきなり大きな掌が頬に無遠慮に触れてきたから。


咄嗟に払いのけ、叫んだ。


「な、なななにすんのぉ!?」


真っ暗闇の中、意地悪くクスクスと笑った哉汰は。


「ホラ濡れてる。…しかも何そのヒニャアって…。あんた、ツッコミどこ満載だな。」


う、うるさいなあ!と憤慨してから、


「ほ、ほっといてよぉ。藤宮くんにだってあるでしょお!?一人で泣きたくなる時くらい・・・」


ヤケクソ気味にそう叫んで、それから柚はズビビッと派手に鼻を啜ると。


フッと漏れた、溜息に似た音。


今のは、笑った…の…?


柚が焦った顰め顔のまま首をかしげていると。


「…確かに。俺も今そんな気分かも。」


返された台詞に、柚は目を見開いた。


え・・・


え?


うそ。


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