わかれあげまん
そこから見下ろす夜景は、真っ黒なキャンバスの中に描かれたひと塊りの青白い星群の様に、あやふやな距離感を保ったまま煌めいていた。
規模は小さいのに、変な話だが、昔自分が旅行で行った函館山からの百万ドルの夜景なんかよりもずっと美しいと、柚は思った。
無言のままいつまでも夢中で見入るのをやめない柚に。
「寒いけど折角だから降りて見る?」
と哉汰が投げた。
「うん!見たい!」
声を弾ませる柚に、哉汰はフッと笑ってから。
「じゃ、それ着て。」
自分の投げてよこしたダウンジャケットを顎で示して言ってから、哉汰はエンジンを切り先に車から降りた。
柚は慌てて言われるままに哉汰のジャケットに袖を通してから、遅れて車を降りた。