わかれあげまん
あたしの、ために…?
穏やかに夜景を見やる哉汰の横顔を、柚はじっと見やった。
純粋な感激から生まれた、えもいわれない感情が柚の心を揺さぶってくるのは。
今の自分が弱っているせい。
そうだと分かってるのに…
どうしよう…
ふい、と予告なくこっちに向けられた哉汰の端整な顔にまた大きく波打つ心臓。
渡良瀬の時とはまったく意味を違えた警告が脳内に木霊する。
ダメ。
ホント、ダメだからね、柚。
つっと目を逸らし、再び今度は自分から、哉汰のジャケットのフードを目深に被った。
その勢いでフワリ立ち込める柑橘系のコロンと、ほのかな煙草の煙の混じった彼独特の香気がし、それはかえって柚の焦燥を煽った。
「あのさ。」
「…………」
暗闇と静寂に響く低音の声。
「…俺に何かできることある?」