わかれあげまん
ジーンズのポケットから引っ張り出したポケットティッシュで鼻をかみ。
柚は平静さを装ってはいるが、まだ尋常ではない勢いで心臓が踊っていた。
ひとしきり笑い転げた哉汰はやがて、フッと溜息をつくと改まったように柚を見て。
「…風邪引く。もう車に戻ろう。」
「…う、ん」
複雑な表情のまま鼻声で頷くと。
ほろ苦い顔で笑ってから、哉汰が先に踵を返し、車のドアの方へと戻り行き。
柚もなんだか若干萎れた感じにうつむくと、反対側のドアへととぼとぼ戻った。