わかれあげまん
「じゃ、おやすみ。」
それ以上取り合う気はないらしく、シートの上でごろりと背を向けた哉汰。
柚はまた短く溜息をつき、途方に暮れた。
不意にまたあの別れ際の渡良瀬の浮き足立った表情が心の中に呼び戻され、背筋にゾクリと悪寒が走った。
どうしよう。…
打ち上げ、とっくに終わってるよね?
ケータイ、…恐くて電源、入れられない。…
今頃先輩、躍起になってあたしの行方を探してるかも。
っていうか、
明日から、どうしたらいいんだろう。
バックミラーに映る自分の姿がどうしようもなく心細く惨めで、泣きたい気持ちに、柚はギュッと唇を噛んだ。
「・・・やっぱここじゃ寝づらい?」
「えっ?」
気配を察した哉汰がいつの間にか再びこちらに身体を向け、少し気遣わしげに柚を見上げていた。