わかれあげまん




ネックウォーマーを首に被せると、またあの優しいフワリとした香りが柚を包み、ほだされるように次にはこう言っていた。


「…えと、あの…藤宮くん?」


「あ?」


「今度、埋め合わせ、させてくれるかな?」


訝しく眉を寄せ、哉汰は柚を見た。


「埋め合わせ?」


「ここ数日で散々お世話になったから、…その埋め合わせ…。」


怪訝な顔を一瞬もっとゆがめ、首を傾げた哉汰だったが。


ぷ。と軽く笑うと。


「別にいいよ。言っただろ?山の上で言った“見返り”ってのは冗談だから」


「違うの!そ、それじゃあたしの気が済まないから!」


きっと深刻な眼差しで見上げてくる柚に、哉汰は面白そうに言った。


「ふーん。俺に何してくれるわけ?」


すぐには思いつかない柚は難しい顔のまま目を泳がせ。


「ま、まだ分かんない。…けど、決まったらすぐ連絡するから、あとでメアド教えて?」


下心丸出しに、時には手の混んだ細工までして自分からメアドを聞き出そうとする女の子は結構回りに多いのだが。


そういう輩とは掛け離れた調子で、表情を崩さずそう請う柚に、哉汰は内心ある意味拍子抜けになった。


ガチで裏表ねーな。

この人。…

ちょっと逆に、危なすぎやしないか?



まあいいか。


と口端を綻ばせ、そして答えていた。


「…分かった。後で教えるよ。」


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