わかれあげまん
『…ありえない。…何ソレ。』
ケータイ越しに聞こえる美也子の予想通りの白けた声が、柚の背筋を寒くする。
「…ご、…ごめん・・・」
『や、別にあんたに謝ってほしいんじゃなくて!』
苛立ち気味に声を張る美也子に、柚はひいっと竦み上がった。
『むしろあんたを放って帰ったあたしにも非があるから、だから自分にムカついてんの!』
「そ、そなの?」
『…そう。』
あろうことが自分が恋人の下へと去ったあの後、体育館のシャワー室などという不届きな場所で柚が渡良瀬に強引に抱かれてしまったことを知り、美也子はやるせない思いでいっぱいだった。
っていうか、柚も簡単に身体を許し過ぎでしょう…
あの人の頬面殴ったあたしの立場は…?
でも、ああ;
やっぱそれだけあの男は、一筋縄じゃ行かないって事よね。…
『で?…』
苛立ち気味にまた美也子が柚に言った。
『どーすんのよ、柚。…このまま渡良瀬と付き合うの?』
「ま、まさか!!」
柚はわななくような声を上げ、ブンブンと頭を振って。
「付き合わない付き合わない!」
『でも、自分は渡良瀬のものだって認めちゃったんでしょ?本人の前で。』
「だ、だってそれは…先輩がゴーインにあたしを…っ」
“答えて。柚は誰のもの?”
強引に奪われたまま悪魔のように囁かれた記憶に、泣きそうにうっと唇を噛む柚。
『悪いけどさ。あんたがいくら一人で頑張っても相手のが一枚も二枚も上手なんだから。うまいこと言いくるめられて、またヤられちゃうのが関の山だとあたしは思うわけ。』
そんなはっきり言われると…凹む…
『始終一緒にいるわけじゃないからさ。あたしだけじゃ守りきれないってのもよくわかったし…』