わかれあげまん
柚も途方にくれ、溜息をついた。
渡良瀬はすっかり自分とうまく行ったと思ってるだろう。
今すぐにもここに押しかけてこられても不思議ではないのだ。
ほんとに、…どうしよう。
と。
暫く黙っていた美也子が不意に言った。
『ねえ柚。こうなったらさ。ほんとに彼氏作っちゃえば?』
「へ?」
美也子の言ってる意味が分からず、柚は眉毛をハの字に曲げて
聞き返した。
『だから。ダミーでもいいからさ。他の彼氏。作っちゃえばってこと。』
やっぱり意味が分からない。
「あの・・・みやこ?」
『でさ。その男に守ってもらえばいいじゃん。』
途方もなく現実味のない話だ。
と、さすがの柚でも溜息をついて。
「そんなの無理だよ。…あたし、わかれあげまんなんだよ?誰が好き好んで、まともな彼氏になってくれるの?」
先輩の二の舞になるに決まってるじゃん。
と、溜息を落とすと美也子が面白そうな声音で言う。
『いるじゃないホラ!藤宮哉汰!!』
美也子の口からその名が飛び出し、どきりと心臓が脈打った。
「え!?」