わかれあげまん
身体を拭き、バスタオルを腰に巻き出ると、艶かしいキャミソール姿でちょこんとベッドに腰掛けニコニコ顏でこちらを見るルチアを認め、哉汰は眉間に指を当て溜息をついた。
思い直すように、再び上げた顔を毅然とさせ。
「…悪いけど今夜は帰ってくれないか?」
「や・だ・あ!」
「…たのむから。」
困らせないでくれ。と肩を竦める哉汰に。
「まだ怒ってるの?ルゥが、イタリアの友達んとこ行ったから…」
涙目になり見上げて来るルチアに、哉汰は力の限り優しく微笑んだ。
「怒ってないよ、別に。」
「ほんと?」
ごめんルゥ。
本当は。
怒る理由なんて、今の俺にはもう、ないんだ。…
「…。少し疲れてるだけなんだ。」
歩み寄り、ルチアの頭を撫でると彼女は立ち上がり、裸の哉汰をフワリと抱きしめてきた。
「ほんとに、怒ってない?」
「ああ」
サラサラの黒髪に指を通し、苦笑して答えると。
「・・・やっぱ、カナタはやさしーね」
顔を上げたルチアは頬を染め嬉しそうに囁き、そして熱っぽく溜息をついた後、哉汰の胸に唇を押し当てた。