わかれあげまん
その時、立ち尽くす自分の前に跪いていたルチアが歓喜に声を高らげ、言った。
「すごぉい、カナタの…大きくて、ドキドキ言ってるよ。…ね、ルゥ、ほしくなってきた?」
「!!」
囁かれた瞬間哉汰は、およそ優しいとはいえない勢いで彼女の肩を背後へ突き飛ばしていた。
「!?カナ…」
ルチアが驚き見上げた哉汰は、肩で息をしながら明らかに憤りと見て取れる上気した顔で彼女を見下ろしていた。
「…カナ…タ?…どーしたの?」
哉汰は顔を険しく歪め、無機質な声で早口に言う。
「ルゥが帰らないなら俺が出てく」
「…ね、…どーしたの?いつものカナタと違う…」
戸惑いにルチアが声を震わせても、哉汰の表情は変わらず。
ヘッドレストにかけてあった服を素早く身につけ、そして振り返った。
「な、んで?…ルゥのこと…キライになったの?」
それに答えることなく、脇にあった彼女の上着をその鼻先に突きつけた。
「…」
帰れ。と態度だけで冷たく示すだけの哉汰に。
「分かった。…も、帰る。」
悲しげに呟き、その腕から上着を受け取り自分に着せかけると、ルチアはうな垂れたまま部屋を飛び出て行った。