わかれあげまん






……柚が戻している間、彼は大きな掌で彼女の背中をさすってくれた。


力強く、だけど優しく。


何たる醜態……


どこの誰とも分かんない人に、ゲロゲロ見せちゃうなんて……


あたしはなんて愚かで、


惨めなんだろう……


激しい嘔吐と情けなさとから、柚は吐瀉物を便器にぶちまけながら涙が止まらなかった。



かなりの量を吐き出してしまって、ようやく嘔吐感は収束した。


「……収まった?」


背中を撫で摩りながら彼が聞いてきた。


「ハイ……すいません……」


消え入るような返答はガラガラに荒れていた。


昨夜の酒と、この嘔吐のせいだ。


< 20 / 383 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop